「台所育児」シリーズとモンテッソーリ教育の共通点

台所育児

モンテッソーリ教育の先生に聞きました!料理を通して子どもの生きていく力を育てよう。

子どもが料理に取り組むために大人ができること

料理は「しなければいけないもの」ではなく「楽しむもの」を意識する

ーどうしたら子どもが自発的にやりたい!と言うようになるのでしょうか?

先生:子どもがやる前に大人がまず楽しんで料理をしましょう。子どもに楽しんで料理をしているところを見せてあげると良いと思います。

ー確かに、大人が楽しんでいないと子どもはやりたがりませんね…。

先生:また、もっと大人が家で料理をつくる機会を増やすこと、大人がまず「食」に関する興味を持つことが必要だなと思います。最近は、料理に手をかけることが時間的に難しい場合もありますよね
最近は仕事をしている方も多いですから、かなり意識をしないと難しいかもしれませんが、ぜひ料理を楽しんでほしいですね。
そして、子どもが一緒に台所にいることが大切だと思います。ひと昔だったら、子どもをおんぶひもでおんぶしながら台所に立つなど、子どもも台所の近くにいましたよね。

ー昔は日頃から子どもが料理に触れる環境だったんですね

先生:そして、子どもが「やりたい」と言ったら、料理に自然と取り組む環境が整っていました。
幼児期の子どもは、大人が家事する様子を見て興味をもちます。子どもが寝ている間に料理や家事を済ませてしまうのはちょっともったいないですね。

ー料理は「自分、家族のためにしないといけない」と考えてしまうと、楽しむ対象ではなくなってしまいがちですが、「子どもとコミュニケーションをとれる場」と捉えなおせば有意義な時間になりますね。
休日などのまとまった時間をとれる日などは特に良い機会だと思います。献立から一緒に考えて、買い物へ行き料理をする、とすれば1日のイベントになりそうです。

例えば、休みの日に家族みんなで餃子を作ってみる

親子でワークショップに参加してみる

先生:最近、教室に子どもを送りに来るお父さんが増えています。昔に比べて家事をする男性も増えてきているのだと思います。料理に関してもお父さんにも期待したいですね。
この前も「僕がご飯をつくっていると子どもがやりたがるんですが、何から始めたらいいですか?」と質問されました。
子どもがもっと料理に関心をもつために、お父さんの役割も大きくなってきそうです。

ーお母さん、お父さんの両方が料理を楽しんでいれば、自然と子どももやりたくなるでしょうね。

実は短い、大人のすることに興味がある幼少期

先生:子どもが大人の家事を見ていて「やりたい」と言うのは、3歳から6歳くらいまでの幼児期がほとんどです。
小学生になってくると世界が広がって色々なものが周りにあり、興味の幅も広がっていきます。大人がやっていることに興味を持つ期間は実は短いのです。

先生:子どもに料理などの家事をしてもらうことは大変ですし、時間もかかります。けれど大変なのはその時だけ。その期間に時間をかけることは、子どもの成長にとって、とても良いことだと思います。
幼少期に興味をもった家事を経験していると、小学生になったころには役割分担ができるようになります。大人の片腕としてお手伝いができるようになるのです。
小さな頃から経験していることは、一度離れてしまっても、後になってまた抵抗なくできます。
料理に関して言うと、台所に「まだ小さいから入っちゃだめ」と言ってしまうと子どもができないと思ってしまい、その子が大きくなった時も近づかなくなってしまいます。
台所が大人の担当の場所になってしまってはもったいないですね。

子どもが難しく感じることなく取り組むための秩序づけ。

先生:モンテッソーリ教育では子どもの「秩序感」を大切にしています。
子どもは日頃から安心感の中で生活をしたいと感じています。その安心感を得るうえで大切なことが、秩序感です。
つまり、いつもと同じであることや日課などのルーティーン、決まり事に安心を感じます。反対に傾向性や秩序が乱れると不安に感じてしまいます。
例えば、「子どもが脱いだ靴を揃えない」と悩む方は多いのですが、靴を揃えることが子どもの中で秩序立っておらず、習慣化されていないことが原因です。

先生:教室では下駄箱に一つ一つ靴の形が書いてあります。こうした「ガイド」があることで、子どもはそこに毎日靴を揃えることに秩序を感じ、ストレスなく行うことができるのです。
こうしたガイドを設けることは色々なところで使われます。
口で説明するだけではなく、目印があることで子どもは秩序性を活かし上手に活動ができるのです。

ーガイドの考え方は、台所育児のモノづくりにも共通しています。
台所育児の子ども用包丁には、ハンドルの部分に2つの赤い鋲があります。

ハンドルの鋲は視認性が高い赤色

―初めて包丁を持つ子どもに、正しい握り方を説明する時には「この赤い丸が隠れるように握ろうね」と説明しています。
「ハンドルの真ん中を持とう」と伝えるより、明確な目印があることで子どもが混乱することなくできているように思います。

赤い鋲を意識することで正しい持ち方ができる

ー台所育児の子ども用まな板では、使わない包丁を置いておく場所に、包丁のイラストが描いてあります。イラストに重なるように包丁を置くと、自然と危ない刃が外を向いて安全に置くことができます。
使い始めに子どもに説明すると、ちゃんと包丁を使わない時には、まな板のイラストに合わせて包丁を置いてくれますね。これも「ガイド」としての役割を果たしていると思います。

見やすいカラーリングと分かりやすいイラスト

調理中も安全に包丁が使える子ども用まな板

先生:子どもは、大人からの説明が分からなかったり、説明が難しいと感じていても、口に出して表現できずにいます。
子どもがなるべく難しさを感じることなく、「同じ位置・同じ場所」の秩序感を感じられるよう、大人が環境として整えてあげることが大切ですね。

実りある実体験のために本物を使う

先生:モンテッソーリ教育では「本物を使う」ということを大切にしています。
子どもは「実体験」をするからこそ、五感が養われて成長していきます。実体験とは実生活に則した体験であるべきなので、本物を使う必要があります。
「子どもに敬意を払う」と教室では考えているのですが、子どもを侮って「分からないだろう」と本物でないものを渡してはダメですね。子どもは敏感に感じ取っています。本物でないと子どもは魅力を感じません。
実際、教室では色々なものがガラス製だったりします。もちろん落とせば割れるし壊れます。だからこそ、生きる力になる実体験ができると考えています。料理の活動でも本物を与える必要性はとても高いですね。

ー「台所育児」の子ども用包丁やピーラーなどの刃物は、まさに大人用と同じ「本物の切れ味」になるよう刃付けをしています。これは子どもの安全性にとっても重要なことだと考えています。
切れない包丁を使ってしまうと無理やり切ろうとして力任せになってしまいます。切れ味の悪い包丁は使ってしまうと余計な力がかかり、思わぬ大きな怪我になる場合があります。

人参などの硬い食材もしっかり切れる

潰れやすいトマトもキレイに切れる

ー子どもたちに、「この包丁は良く切れる包丁だからね」と説明すると、みんな本当に丁寧に包丁を扱います。本物の刃物と知って危ない刃物を扱うことで、まさに実体験ができるのですね。
切れない包丁で料理の「疑似体験」をしている子どもも、大きくなっていけばいつかは切れる本物の包丁を使う時がくるわけです。そうであれば、子どものうちに本物に早く出会っていれば、その分本物を扱う経験を積めると考えています。

毎日の料理を子どもたちの学びの機会にしませんか?

子どもの好奇心・探求心を料理を通じて育てよう。

料理は五感を使って様々な発見・体験を積み重ねることが出来るハンズオン(体験学習)のひとつ。一見難しそうな料理をやり遂げた経験と達成感は、子どもの自己肯定感を高め、自信に繋がります。
さらに料理を作る人の気持ちを理解し、作った料理を食べてもらう喜びを知る経験となり相手の立場に立って考える力、自分自身で生きる力を育みます。
ぜひ、ご自宅でも実践してみてください。

紹介アイテム

関連特集

特集一覧