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商品レビュー

ESPRIT Bakery & Cafe 吉村学シェフに聞く、パンの美味しさとスタッフが楽しく働くための秘訣

ホテルやレストランに向けたパンの卸業を手掛けている株式会社小麦家の代表取締役である吉村さん。日々、パンの技術を磨き続け新たなパンの可能性を探求されています。
ESPRITはそんな小麦家が手掛けるベーカリーです。2019年に岐阜市長良エリアに1号店となるお店をオープンして以来、あっという間に岐阜エリアの人気店のひとつとなり、2021年に各務原、2022年に名古屋久屋大通にて新店舗をオープンされました。

岐阜市の中心部、長良エリアに佇むESPRIT Bakery&Cafeの近くには長良公園があり、平日・休日問わずに沢山の人で賑わっています。好立地と共に、お店ではバゲットを始めとするハードパン、ドイツパンなど種類豊富なパンが時間を問わず並んでいます。

そんなESPRITを手掛ける吉村さんに、パン屋さんを始めるきっかけや、実際のベーカリーの経営について伺いました。
(インタビュー2020年8月)

若手が無理なく働ける「完全週休二日制、1日8時間労働」のパン屋さん

もともとパンの卸業に携わる吉村さんが、リテールベーカリー(お店)を出そうと思ったきっかけは何ですか?

もともと、パン屋に挑戦したいという構想は10年以上ありました。ただとりあえず出店するのではなく、「我々がやるならどんなパン屋をやるかな?」とずっと考え続けてきましたね。
製菓専門学校の非常勤講師をして5,6年ほどになるんですが、そこで出会うパン屋を志す若い人たちが、最初はキラキラした目で「パン業界に就職します!」と言って卒業していくんです。
でも、卒業後3年くらい経つと、この業界に残っていない。そんなこともあって「自分がパン屋をやるならどうするか」と考えていましたね。

パン業界は楽しそうに見えて大変。というお話はよく聞きますが…

学生が社会人となって実際に働きだした際の「夢と現実のギャップ」はどんな業界でも確かにあると思います。
特に、僕自身がパン屋を志して製パン業界に入った頃は3K(サンケー)もいいところでしたね。朝早くから夜遅くまでの長時間労働が基本で、ずっと立ち仕事なので女性には特にきついのかなと思ったりする業界でしたね。

今、世間が働き方改革にある中で、製パン業界ってちょっと取り残されている業界ではあるのかなと思っています。
特に、若い子たちの働き方に対する思いや考え方とちょっとズレてきていると、専門学校の講師を通して、ここ5,6年強く感じていました。
なので、もし僕が店をやるなら「完全週休二日制、8時間労働」で終われるようにしようと。そんなパン屋を目指してみたいと思いました。それに我々はもともとパンの卸業なので、作業分担ができ「完全週休二日制、8時間労働」も実現できるなと思いました。

3K(サンケー)/きつい、厳しい、汚いなどの頭文字を取った言葉。労働環境や労働条件が厳しい職業を指す言葉。

ESPRIT(エスプリ)は1日8時間で業務が完結するんですか?

はい、終わりますよ。

うちの店では、店舗内での仕込み作業がないんです。
全てのパン生地の仕込は工場で行います。生地はタッパーやボックスに入れて低温で長時間発酵させながら温度帯を分けて管理してからお店に移送します。

お店では、スタッフが朝出勤したら生地を分割・成型・焼きと始まるようにしています。
だいたい一つの生地を16時間くらい発酵させるので、1日24時間の中から発酵時間の16時間を引くと8時間労働で済むっていう計算ですね。
究極まで効率を考え、人の寝る時間を作り、最大限のパフォーマンスを生み出す。

長い時間をかけて発酵することで水和がより進み、パンの消化も良くなるし美味しさもぐっと引き出てきます。
ちゃんと発酵時間をとった美味しいパンが比較的短時間、労働力としては最小限でできる。
こんな営業の仕方のパン屋は他ではなかなか無いし、そう簡単には実現できないと思います。

取材中も手際よくパンがどんどん焼き上げられていく

パン屋としての仕組みを根本からしっかりと考えたということですね

もともと株式会社小麦家はパンの卸業をやっています。全国に向けて「専門的にパンを卸す」という、ちょっと難しいことをやってきた会社です。
そういった技術を生かしながら、「我々ならどういうパン屋ができるのか」「我々ならどういうエッセンスが入れられるか」そういった点を深く考えて経営することで、パン屋として他店よりも、より差別化できるかなと思ってやっています。

パン屋を続けながら、パン業界のためにできること

お話を伺っていると、非常に戦略的に経営されているように感じますが心がけていることはありますか?

お店をオープンすることでただ満足するのではなくて、僕は「パン屋を続いていく」っていう事がとても大切だと思っています。

例えば、お客様に認めていただけず、パンが売れなければ続いていかない。
オープン後、3年間残れるお店は少ない。まずは3年残れるように考えていかなければいけない。

でもそれだけではなく、働いてくれる方々が、生き生きと働いてくださるからお店を続けられる。ますは、働き方に無理がないようにすることで、スタッフがパン業界から抜けずに残って働いていける。そういう事もきっと大切なんじゃないかと思っています。

ESPRITでは、無理なく好きな仕事が続けられる形ができていますね

例えば、パン屋にとって「仕込みがない」ってすごく大きなことなんです。
比較的、誰でもできるように業務を分業化することで、力を分散せず集中して技術力をアップできる。

パンの分割、成型、焼きだけを毎日続けて半年たてば、僕と変わらないくらいの技術力で出来るようになると思っています。
「分割、成型、焼き」の部分は、プロフェッショナルになれる。

お店では、まず分割・成型・焼きを教えて習得してもらいます。
習得後、更にモチベーションがあって「一流のパン職人になりたい」「パンの仕込みを見たい、覚えたい」という場合は、工場で更に学んでもらう。
そうやって工場と店舗の間で人の循環ができ、人手不足の問題もある程度解消されます。

求人の面でも、パン屋の店舗スタッフは募集しやすい業態ですよね。
でも、いきなり「工場」っていうとなかなか人が集まらなかったり、応募が少なかったりします。特に若い子はそうですね。

工場と店舗の間で人の循環が出来て、バランスが取れるのかなと思っています。

吉村さんの「これからのパン業界を支えたい」という思いが伝わってきます

料理人のシェフやパティシエの方に比べると、まだまだパン職人の地位って低いと思っていて、パン職人の立場をもっと向上させたいと根底で思っていますね。

パンを作るって、実は頭の回転がすごく早くないとできなかったりするんですよ。
料理は「作るもの」と言いますが、パン職人にとってパンは「育てるもの」という認識です。

パンの生地は酵母や菌を使ってつくる、いわば生きているもの。
なので、パンをどう育てるかには、愛情がないと良いパンはできないと思っています。サボればサボったパンになるんですよね。
パン窯から出てくるまでしっかり愛情をかけて、タイミングやバランスなどの色々な適性をきちんと見ないといけません。
でもそうすれば、とても美味しいパンが焼けるんです。
僕の師匠からは「人間性がパンになるんだよ」ってよく言われました。

それなのに、こんなに苦労しているのにパン職人の地位は低いまま。

「パンは日常のもの」と言われる一面があるんですが、ゆくゆくはパン職人の社会的地位をもう少し向上させたいという想いが、僕一人の力では変えられないにしても、ずっと根底にあります。

思いを伝えていくためのSNS戦略

ESPRITは、日々魅力的なInstagram投稿をされている印象がありますが、何か戦略はありますか?

これからの時代「いいものを作って店に並べておけばいいだろう」という時代ではないと思っています。
より広く多くの方に知ってもらうためには、まずSNSという場所で僕たちの考え方や姿勢を伝えていく。その中で、どういったファンを作っていくのかといった戦略が大切だと思って、力を入れています。

僕たちの考え方を常日頃、直接お客様にお話できればいいんですけれど、なかなか日々の業務に追われて、実際にできることもそんなに多くないですからね。

https://www.instagram.com/esprit_official_/

店舗運営とSNS運営の両立は大変だと思うのですが、決め事などはありますか?

SNSチームをスタッフ内で作っています。
専任で一人のスタッフがやると疲弊してしまう場合もあるし、アイディアも限られてきてしまう。
そのため、無理がないように交代制で運営していますね。

さらに投稿して終わりではなく、投降後も何かに続くようにアップデートできるように意識しています。
そしてSNSを通じて、どんなパンの反応がいいのか計っていたりしますね。

Instagramがもとで商品化したパンもありますか?

ありますよ。
お客様からDM(ダイレクトメール)で「こんなパンを作ってほしい」「こういう風にするともっと面白いんじゃないか」などのいろんなアイディアを実際に頂くことがあります。パン職人の発想では思いつかないようなことを教えていただいて、「じゃあ挑戦してみよう」と実現しましたね。

挑戦することはすごく大切だと思っていますし、大好きなのでどんどんやっています。
失敗することも沢山ありますが、ひょんなことから成功したりするので、とりあえずやってみようという姿勢で何でもやっています。

パンのフォルムや色彩の表現幅を広げるナイフ

沢山の人に愛されるパンが生み出されるESPRITの厨房では、サンクラフトの波刃モンスターやパン切りナイフ「せせらぎ」などのアイテムが活躍中です。吉村さんに波刃モンスターの使い勝手を伺いました。

波刃モンスターを使った感想を聞かせてください

パンは、大きく焼けば大きく焼くほど中身がしっとりして美味しくなるイメージがあります。なので、波刃モンスターを手に取った時に、これからは「大きなパンを作ってもいいんだな」と考えられるようになりました。

大きな鉄板一枚でパンを焼いたとしても、刃渡りの短いナイフでカットしてしまうと2回刃を入れることになります。
そうするとパンの断面がギザギザになってしまい商品価値が無くなってしまいます。今までは、手持ちのナイフの刃の長さからパンの限界のサイズを決めていましたが、波刃モンスターなら自由な発想でいろいろな大きさのパンに挑戦できますね。

波刃モンスターを使えば、メニューの幅が広がるという事ですね

例えば、フォカッチャも天板で大きく焼いてから切り分けることで、キューブ型など形が自由にできます。
もともと、パンは形でのバリエーションが出しづらいものです。どうしても、ぼてっとした丸いフォルムになりやすい。「シャープなイメージでパンを作りたい」と思っても、カットでしかシャープさが出ません。

しかもメイラード反応が必ず起きるので、焼いたら全部茶色です。パン屋さんのお店の棚を見たら、全部茶色ということも多いですよね。
でも、パンの断面はしっかり色が出てくれるので、カットすることでフォルムや色彩の表現ができます。ビーツを入れて赤色を出してみたり、いろんなことにチャレンジできる。
波刃モンスターを使うことで、これからのメニューの可能性をすごく感じました。

波刃モンスターは、具体的にどんな場面で活躍していますか

大きく焼いて、切り売りするパンを販売しています。
これまで使っていた一般的なパン切りナイフでは焼きたての状態でうまく切ることができず、泣く泣く前夜に焼いて翌朝カットしていました。

しかし、波刃モンスターでは焼きたてのパンもスパッとキレイに形を潰さずに切ることができて感動しました。
朝焼いたパンでも冷めるまで待つことなく、オープン時から切って提供できるようになって嬉しいです。しかもこれだけ長くてこれだけ軽いってことに驚きですね。

波刃モンスターは刃渡りが長いので、使う前は切れ味にむらがあったりするのかなと思いましたが、どこで切ってもスパッと切れますね。
大きなパンを焼いているパン屋なら手放せない一本になりますよね。

切り売りのパンと一緒に並ぶパン切りナイフ「せせらぎ」14cm(取材当時)

ESPRIT Bakery&Cafe

吉村 学シェフ プロフィール

1982年生まれ。「MAISON DE FROMENT(メゾン ド フロマン)」ブランドとして全国のレストランやホテルに安心安全で高品質なパンを提供する株式会社小麦家の代表取締役であり、ESPRIT Bakery&Cafe(エスプリ)のオーナーシェフ。パンの卸業とベーカリー双方の強みを生かしながらパンの新たな可能性に挑戦している。

ESPRIT NAGARA
岐阜県岐阜市長良東1-29

ESPRIT KPB
岐阜県各務原市那加雲雀町30番地1

ESPRIT NAGOYA
愛知県名古屋市東区東桜1-1-1

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